河野義行氏(元長野県公安委員・松本サリン事件被害者 (R・S・C顧問)基調講演
たとえば事件が起きますと事件報道がありますよね、そうした時にたとえばメディアのほうで、テレビならテレビニュースの中で、被害で困っている人はこういうところが相談窓口でありますよという文字でも入れてくれれば非常にアクセスしやすいと思うんです。
ちょうど事件から10年経った時に、領収書が全部残っていますので、一体どれぐらい自己負担したのかと計算したら2000万円を超えていました。そんな中で犯罪被害者等給付金というものを請求しまして、裁定されて出てきた金額が417万円でした。417万円がどの程度の金額かといいますと、私が東京に妻を2回入院させたことがあり、2回の入院期間は合計で4ヶ月間でした。4ヶ月の差額ベッド代で終ってしまったんですね。それで国は支援したという話になっていたから、犯罪被害の経験なんてありませんので、こんなものかなあとそういう思いが当時はありました。 それからいろんな被害者支援というのは言ってみれば始まったばかり、やっと今2期という話も出ておりましたけれども、そんな中で私はこれはやらなければいけないという思いがあります。それは例えば犯罪で被害を受けた時に加害者が判っている場合は、加害者に対して民事裁判を起こして判決をもってその被害を補いなさいというのが国の基本的な考えなんですね、ところが現状はどうなのかといったときに、加害者が判っていて裁判を起こし、裁判に勝っても、被害者は言ってみれば何の救済にならないというのが現状なんです。それはどういうことかいいますと、加害者に支払い能力がないというケースが圧倒的に多いということです。被害者は国の方針に従って加害者に対して裁判を起こし勝訴しても、なお且つそれで救済されるどころか訴訟費用は持ち出し、これ現状ですね。そうしますとやはりやっていかなければいけないこと、少なくとも国の方針で裁判をやって勝訴の判決を取ったなら、それが反映されるようなシステムか法律を私は作るべきだとそういう思いです。日本の警察は都道府県単位ということですから、都道府県でもいいです。例えば、犯罪被害保険みたいな形で県民税から薄く資金を集めて、それを原資として保険のような形で運用していくとか、そういうことでもやっていかないと何の為の裁判なんだというのが実感です。
それから、私が公安委員をやっている時に体験した中で、こんな問題もありました。たとえば自分は犯罪によって被害を受けたから犯罪被害者だと思っていても、それを決めるのは誰かということなんです。犯罪被害者であるということを決めるのは警察が決めていくわけです。そうしますと警察が間違える、こういうケースがあったんです。 最後にもう一つの事例を紹介し、問題提起したいと思います。それは長野県の塩尻という所に奈良井川という川があるんです。そこで男女の焼死体が上がったわけです。警察はこれを事件と心中、両面で捜査を開始するわけです。しかし結論が出ていないんです。そうしますと犯罪被害者なのかあるいは心中なのかわからない、わからないというところでとまってしまうケースもあるわけです。犯罪被害者支援といいながら実は犯罪被害者かどうかわらない、どうするの?そういう問題が出て来たんですね、そうするとある期間経ってわからない時、それは犯罪被害者とすると定義しなければ、支援団体も動けないということです。この事例のように被害者と認定する裏づけ証拠がないというケースもあるわけです。そうした時にその人を5年も10年も15年もそのままおいていいのか、そういう問題です。 それからリカバリー・サポート・センターはこれからどうしましょう?という話がありますが、やはり一番の特徴というのは、スタッフに専門家が揃っているんですね、毒ガスの専門家の黒岩先生、あるいは聖路加病院の石松先生、あるいは大学の医学部の先生などさまざまなスタッフがいます。そうしますとサリン事件の被害者というのはおそらくどこかで終っていくわけです。終っていくというのは、私は被害を受けた時は44歳、今60歳、あと何年かすればおそらく死んでいきます。サリン被害者も亡くなっていく、そういう意味です。リカバリー・サポート・センターはサリン被害者だけではなくて定款には一般の犯罪被害者の支援も行うということになっています。そうしますと一番動きやすいのはいろいろな分野の専門家がいるということです。代表は弁護士ですし、一元化という話が出ておりましたが、リカバリー・サポート・センターに話が来た時にそれは法的な問題なのか、医学的な問題なのか、精神的な問題なのかそういうものの中でアドバイスが的確に出来るのがリカバリー・サポート・センターではないかと思います。特徴を最大限生かし、他の支援団体とリンクし、支援を継続して行くことが大切だと思います。 以上 |
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